ワイヤー界の王様 BELDEN の歴史の中でも、とても古いワイヤーです。見ての通り、極細（約0.1mm）ですが、その細腕からは想像もつかない、その実力は いやいや恐るべしものでした。その「瑞々しさ」は、最初に聴いた瞬間 驚嘆に値します。それだけではありません。このワイヤーには、まるで宇宙物理学的迷宮？とも例えられる逆説的な現象が何カ所もありました。

ひとつは、VINTAGE感たっぷりのまろやかな音質なのに、ソースが若返りを果たしたように生き生きとする。賢者が若々しく蘇ったとでもいいましょうか。クラシック系でも顕著にその効果は見られますが、LA系のレッキングクルーの演奏した数千曲にも及ぶヒットナンバーのうち、その代表曲を聴くと、もう空いた口が塞がらない状態に。・・・蘇ったのです、見事に。例えば、S&GとかPhil Spectorとか、BeachboysのPet soundsとか、気持ちよさに終わりがない。キンコンカンコン！・・意味不明。でもとにかく滅茶苦茶ポップなんです。

もうひとつは、質感に暖かさがありながら非常にすばらしい分解能（分析力）を兼ね備えている事実。この逆説的な要素を、双方揃えて表現してくれるケーブルは、BELDENやWEの中でも発見がなかなか難しく、滅多にあるものではありません。このワイヤーならではの固有の世界と言えるでしょう。BELDENですから、ウルトラハイがダントツに突出する方向ではありません。むしろその高域の旨い具合の「まろやかでいてクリア」な音表現が、このケーブルの最も優れているところです。

それで、70年代初期のソフト・ロックなんぞ聴くと、痺れました！！スタジオ内の様子が克明にわかる。イントロからハッとする幸福感。横方向に音は広がりそれぞれの楽器のエッジがくっきりするどころか、空間に舞うような演出力。このような音は初めて聴きます。アコースティック・ギター再生に関しても特筆すべき極上感があります。例えばブレッドなんかいかがでしょうか。もうたまりません。

流麗な舞踏会が観たいのであれば、それにあたるクラシック・ソース（R.シュトラウスであろうがなんであろうが）をかけた瞬間に、そのキラビやかな映像が目の前に浮かんでくる程の演出力も持ちます。「リアリティー」と「夢心地」これまた相反する世界が同時に味わえるすばらしさ。やっぱり初期の BELDEN というだけのことはあります。

アンプは勿論、例えばレコードアーム用配線材にもいいかもしれませんね。色んなところに工夫してかませたくなるワイヤーです。